高齢者にとって入浴は、身体の清潔を保つだけでなく、健康維持においても非常に重要な習慣です。
ですが年齢を重ねると体力や動作が低下し、入浴を避けがちになることも。
本記事では高齢者が入浴をしない場合に、身体・心・社会的な面でどのようなリスクがあるのかを詳しく解説します。
加えて、入浴をサポートするための具体的な対策も紹介します。
お風呂に入らない時の対策も知っておくと安心できるね
高齢者が入浴しないとどうなるか?【身体への影響】
高齢者が入浴を避けることで、身体にさまざまな悪影響が及ぶ可能性があります。
特に注意すべき身体的なリスクについて説明します。
皮膚トラブルが発生しやすくなる
入浴を怠ることで、皮膚に汚れや皮脂が溜まりやすくなり、肌の健康を損なう可能性があります。
高齢者の皮膚は若年者に比べて薄く乾燥しやすいため、放置するとこんなリスクが高まります。
- 湿疹
- かゆみ
- 感染症
特に、入浴を避け続けると皮膚に付着した細菌が増え、皮膚の炎症やじょく瘡(じょくそう:床ずれのこと)などの深刻なトラブルにつながることも…
皮膚は体を外界から守る重要なバリアですので、入浴による清潔保持は欠かせません。
痒いのも不快だけど、もっと深刻なリスクもあるんだ…
血行不良を引き起こす可能性がある
入浴は温水の刺激によって血行を促進し、体全体の血流を改善する効果があります。
これが高齢者の身体には特に有益。
定期的な入浴はメリットがたくさんあります。
- 血液循環が良くなる
- 手足の冷えを防ぐ
- 肩こり、腰痛の予防
しかし入浴をしなくなると血行不良が進行し、体の末端である手足が冷たく感じることが増えるでしょう。
さらには、血行不良が原因で慢性的な疲労感や倦怠感を引き起こす可能性もあります。
お風呂に入ると体の芯からぽかぽかする♪
筋力低下や関節のこわばりを招く
入浴時における湯船への出入りや体を洗う動作そのものが、高齢者にとって軽い運動になります。
入浴が、高齢者にとっては筋力の維持や関節の柔軟性を保つのに役立つ効果があるということ。
入浴をしない期間が続くと、筋力低下や関節のこわばりが進行しやすくなります。
長期化すると体を動かす機会が減り、さらに動きづらくなるという悪循環に陥るリスクも。
入浴の、ひとつひとつの動作に運動効果があるんだね
免疫力が低下する恐れがある
入浴による温熱効果は血行促進だけでなく、免疫力を高める働きも持っています。
身体が温まることで免疫細胞の働きが活発になり、病気に対する抵抗力が向上。
ですが、入浴を避けると体温の調整が上手くいかず、免疫力が低下する恐れがあります。
結果として風邪や感染症にかかりやすくなり、回復も遅くなる可能性があります。
免疫が正常に働ける体温は36.5℃。
体温が1℃上がると、免疫力は最大で5〜6倍にもなると言われています。
※自然免疫応用技研参照
免疫力を高めるのに、体温を上げるの大切ってよく聞くなあ
高齢者が入浴しないとどうなる?【心への影響】
入浴は身体だけでなく、心にも多くの影響があります。
不安感やストレスが増加する
入浴にはリラックス効果があり、心身をリフレッシュさせる役割を果たします。
お湯に浸かることで筋肉が緩んで血流が良くなるため、心も落ち着きやすくなります。
しかし入浴をしない生活が続くと、心が休まらずストレスや不安感が増す傾向があります。
特に高齢者は日々の些細なことでもストレスを感じやすく、心のケアが重要です。
湯船に浸かると副交感神経がオンになってリラックスしやすいよ♪
睡眠の質が低下する可能性がある
夜間の入浴は体温を上昇させた後、徐々に冷めていく過程で自然な眠気を促します。
これが深い眠りを作る仕組み。
入浴によるリラックス効果は、良質な睡眠に直結しています。
逆に入浴をしないことで眠りに入りづらくなり、夜中に何度も目が覚めるといった睡眠障害が起こるリスクも…
高齢者にとって睡眠は健康維持の重要な要素。注意が必要です。
睡眠は「温度を上げてから下げる」がポイントなのね
うつ症状が現れることがある
長期間入浴しないことで、身体だけでなく心の健康も悪化することがあります。
清潔でない状態が続くと自己嫌悪や無力感が強まり、結果としてうつ症状が現れることがあります。
特に一人暮らしの高齢者さんにとっては大問題。
他者と接する機会が少なくなるため、孤独感や無気力感が高まることが原因で、精神的な不調を感じやすくなります。
お風呂に入れてないという理由で、人との関わりが減るのは心配だわ
高齢者が入浴しないとどうなる?【社会的な影響】
入浴の習慣が失われと、身体的・精神的な問題だけでなく、社会的な影響をも引き起こす可能性があります。
孤立感が強まる可能性がある
「入浴をしない→清潔感の低下→人と会うことを避ける」の悪循環で、結果として社会的な孤立感が強まることがあります。
外出が減り、他人と触れ合う機会が少なくなると、さらに孤立してしまうリスクも。
特に高齢者は家族や友人との交流が少なくなることで孤独感が増し、精神的な不安定さが増す傾向にあります。
人とのつながりの維持のためにも、入浴は重要な役割があるんだね
周囲とのコミュニケーションが減少する
入浴しないことによって、見た目や臭いに自信を持てなくなり、人と会うことを避けがちに。
入浴できない期間が続くと、日常的なコミュニケーションの機会が減少し、社会的な孤立が進む原因になります。
会話が減ることで脳の刺激が減り、認知機能の低下が進むリスクも高まります。
入浴は「人と接するときの自信を保つ」という役割も大きいね
不衛生による他者とのトラブルが発生しやすくなる
清潔を保てないと、見た目だけでなく体臭の問題も発生しやすくなります。
周囲の人々とのトラブルが発生するリスクも…
場合によっては対人関係が悪化する恐れもあるだなんて、心配になりますよね。
不衛生な状態は、高齢者自身の尊厳や自信を失わせるだけでなく、周囲との良好な関係を保つ上でも重大な問題となります。
自信を持って、自分らしく周りと接するためにも入浴してほしい!
高齢者が入浴しない場合の対策とケア
高齢者が安全に入浴を続けられるようにするためには、適切なケアやサポートが必要です。
入浴をサポートするための具体的な方法を紹介します。
プロに頼ったりしながら「続けられる」方法を探そう!
入浴介助サービスの利用を検討する
入浴が難しくなった高齢者には、介護保険を利用して入浴介助サービスを導入することが一つの方法です。
プロの介護者が安全に入浴をサポートしてくれるため、家族の負担も軽減できるのがメリット。
訪問介護での入浴サービスは安心して入浴できる環境があるため、身体の清潔を保つだけでなく精神的なリフレッシュにもなります。
清拭などの代替ケアを取り入れる
どうしても入浴が難しい場合は清拭(身体を濡れタオルで拭く)などの代替ケアを取り入れることが重要です。
特に入浴が困難な状況でも、清潔を保つために毎日の清拭は欠かせません。
清拭は皮膚の清潔保持に加えて血行促進やリフレッシュ効果も期待できます。
できる限り取り入れたいですね。
家族や介護者の声かけを行う
入浴を促すためには、家族や介護者の声かけが重要です。
無理強いするのではなく、本人がリラックスして入浴に臨めるように配慮しましょう。
また、入浴後の気持ち良さを伝えることで、ポジティブな感情を持ってもらうことが大切です。
声かけによる安心感や信頼関係の構築が、入浴の習慣化を助けるでしょう。
バリアフリーの浴室設備を整える
高齢者が自宅で安全に入浴できるよう、バリアフリーの浴室設備を整えることも重要です。
- 手すり
- 滑り止めマット
- 座ってシャワーを浴びられる椅子
簡単な工夫でも安全性を高められます。
高齢者自身も入浴に対する不安感を軽減し、積極的に入浴できるようになるでしょう。
【まとめ】高齢者が入浴しないとどうなるのか
3つの影響まとめ
- 体への影響
- 心への影響
- 社会への影響
高齢者が入浴を避けることによる身体的、精神的、そして社会的なリスクは非常に大きいです。
皮膚トラブルや筋力低下、さらには心の健康にまで悪影響が及ぶリスクがあります。
入浴は、ただ清潔を保つだけでなく、健康全般を支える重要な要素。
家族や介護者が積極的にサポートし、高齢者が安全かつ快適に入浴できる環境を整えることが不可欠です。
入浴が難しい場合でも、清拭や入浴介助サービスなどの代替ケアを取り入れて、できるだけ清潔と健康を保つようにしましょう。
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